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ピジョンが追求する乳児の皮膚研究:フィラグリンと独自成分「フィルベビーEX」で健やかな皮膚バリアを育む

バリア機能が脆弱な乳児の皮膚を健やかに保つために。ピジョンの皮膚研究と保湿成分の開発についてご紹介します。

ポイント

  • 乳児の皮膚はバリア機能が未熟なので、アレルゲンが侵入しないように皮膚を健康に保つことが大切で、生活の中で皮膚を健やかに保つケアが必要です。
  • ピジョンは、皮膚のバリア機能と保湿機能において中心的な役割を担っているフィラグリンに注目しています。
  • ピジョンは、フィラグリン産生に働きかける保湿成分として、「サガラメエキス(海藻由来)」と「マンダリンオレンジ果皮エキス(オレンジ由来)」に焦点をあて、独自の保湿成分「フィルベビーEX」を開発しました。

ピジョンが皮膚研究で目指していることは

ピジョンが目指すのは、乳児が本来持っている皮膚バリア機能を維持し、健やかな肌の発達・発育に寄与することです。

乳児の皮膚のバリア機能は脆弱であるため、乳児湿疹等の皮膚トラブルが生じている部分からアレルギーの原因物質であるアレルゲンが侵入すると経皮感作が生じ、アレルギー症状を呈するリスクが高まることが示唆されています1)。そのため、アレルゲンが侵入しないように皮膚を健康に保つことが大切で、乳児期のスキンケアがますます重要となります。そこで、乳児の肌に安心・安全な原料で、保湿効果の高いスキンケアが求められています。

  • 経皮感作:角層から排除するべく、一連のアレルギー反応が起こる準備態勢になっていること。

日本で増えているアトピー性皮膚炎

厚生労働省の調査によると、日本におけるアトピー性皮膚炎の患者数は増加傾向にあり、有症率は4か月児で12.8%、1歳6か月児で9.8%、3歳児で13.2%と報告されています2)。また、新生児・乳児期にアトピー性皮膚炎や食物アレルギーがある場合、幼児期に気管支ぜんそく、思春期にアレルギー性鼻炎と、成長にともなってアレルギー疾患が連鎖的に生じる確率が高くなる現象「アレルギーマーチ」3)が提唱されています。

ピジョンが着目したフィラグリンとは

フィラグリンは皮膚のバリア機能と保湿機能において中心的な役割を担っており、アトピー性皮膚炎患者では皮膚内のフィラグリンが不足していることが報告されています4)5)

フィラグリンは、角層に存在するタンパク質で、皮膚のバリア機能と保湿機能において中心的な役割を担っています。
主な働きは、以下の2点です。

①角質細胞内で頑丈な骨格を保つ

肌の内側で細胞内の骨格タンパク質(ケラチン線維)を束ねることで、細胞を頑丈にします。

  • フィラグリン ケラチン繊維

②保湿成分として働く

肌の内側で分解されることで、天然保湿因子(NMF;Natural Moisturizing Factor)として働き、保湿に役立ちます。

  • 保湿成分としての機能図

フィラグリンの異常はアトピー性皮膚炎(AD;Atopic Dermatitis )の発症との関連が深く、AD患者では皮膚内のフィラグリンが不足していることが報告されています4)5)。特に乳児期の皮膚は薄く未熟であるため、フィラグリンの正常な発現と機能が、健やかな皮膚バリア機能の維持とアレルギーマーチの予防に重要と考えられます。

ピジョンのフィラグリン研究から生まれた保湿成分は

ピジョンは、フィラグリン産生に働きかける保湿成分として、「サガラメエキス(海藻由来)」と「マンダリンオレンジ果皮エキス(オレンジ由来)」に焦点をあて、独自の保湿成分「フィルベビーEX」を開発しました。

ピジョンは、乳児の肌トラブルを未然に防ぐためには、保湿はもちろん、フィラグリンの力を引き出すことが重要だと考え、研究を重ねる中で「サガラメエキス(海藻由来)」と「マンダリンオレンジ果皮エキス(オレンジ由来)」という2種類の保湿成分に焦点をあてました。
ピジョンのベビースキンケア「フィルベビーシリーズ」には、この2種類の成分から構成される独自の保湿成分「フィルベビーEX」が配合されており、フィラグリン産生とその後の保湿機能に至る分解プロセス双方に働きかけることを目指しています。
ピジョンでは、フィルベビーEXによるフィラグリン遺伝子の発現促進効果について、サガラメエキスとマンダリンオレンジ果皮エキスの原料の単体および混合物、および、サガラメエキスとマンダリンオレンジ果皮エキスの混合物を配合した製品と両エキス無配合の製品、既存市販品との比較検証を行いました。

  • ピジョン独自の保湿成分「フィルベビーEX」の図

研究1:サガラメエキスおよびマンダリンオレンジ果皮エキスのフィラグリン遺伝子発現

各エキスの単体および混合物を三次元培養皮膚モデルへ添加したときのフィラグリン遺伝子の発現量を測定しました。図1にコントロール(比較対象:溶媒のみ)を基準としたフィラグリン遺伝子の発現比を示しました。
フィルベビーEXの構成成分であるサガラメエキスを添加した群では、コントロール群と比較してフィラグリン遺伝子の発現量が有意に増加しました。マンダリンオレンジ果皮エキス単独では有意な変化は見られませんでしたが、サガラメエキスと組み合わせることで、サガラメエキスの遺伝子発現促進効果を妨げないことが確認されています。

図1.フィラグリン遺伝子発現量比(原料)

研究2:サガラメエキスおよびマンダリンオレンジ果皮エキスを配合した化粧品のフィラグリン遺伝子発現

サガラメエキスおよびマンダリンオレンジ果皮エキスを配合した製品、両エキス無配合の製品および既存市販品を三次元培養皮膚モデルへ添加したときのフィラグリン遺伝子の発現量を測定しました。図2にコントロール(比較対象:溶媒のみ)を基準としたフィラグリン遺伝子の発現比を示しました。
サガラメエキスおよびマンダリンオレンジ果皮エキスを配合したローション、クリームいずれの製品においてもコントロールと比較して有意にフィラグリン遺伝子の発現が増加しました。一方、サガラメエキスおよびマンダリンオレンジ果皮エキスを配合していないローションとクリームではコントロールと比較して有意な差は認められませんでした。同成分のローションとクリームでも両エキスの配合の有無でフィラグリン遺伝子の発現には差異が認められました。これらの遺伝子レベルでの結果は、フィルベビーEXがフィラグリン産生を促進し、皮膚本来のバリア機能と保湿機能を内側から高める可能性を示しています。

図2.フィラグリン遺伝子発現量比(製品)

使用モニター試験結果

乳児を対象としたフィルベビーベビーミルクローションの2週間の使用モニター試験では、ローション塗布群において角層水分量が増加する傾向が観察されました。また、肌のキメの変化についても改善が見られています。皮膚科医による評価では、全体として肌状態は良好であり、保湿の面でも改善傾向であったと報告されています。

ピジョン研究員のコメント

研究の結果、サガラメエキスおよびエキス混合物に、フィラグリン遺伝子の発現促進効果が認められました。マンダリンオレンジ果皮エキスにはフィラグリン分解酵素の産生促進作用が知られています6)が、フィラグリン遺伝子の発現には負の影響を与えませんでした。マンダリンオレンジ果皮エキスはフィラグリンの分解を促進することで「天然保湿因子(NMF)」産生に影響を与えることが期待されるため、今後更なる研究が必要だと考えています。
また、サガラメエキスおよびマンダリンオレンジ果皮エキスの混合物を配合した製品においてもフィラグリン遺伝子の発現促進効果が認められ、エキスを配合していない製品においてはフィラグリン遺伝子の発現には影響を与えませんでした。この結果から、フィラグリン遺伝子の発現促進効果はエキス配合によるもので、エキス混合物は製品に配合しても効果を発揮すると考えられます。さらに、これらの原料の安全性についても皮膚一次刺激性・感作性試験などにより確認されており、乳児などバリア機能の未熟な方への使用も問題ないと考えられます。
以上の結果から、サガラメエキスおよびマンダリンオレンジ果皮エキスは乳児などのバリア機能の未熟な方への保湿効果やバリア機能の維持について期待できる保湿成分だと考え、今後製品開発に応用していきたいと思います。
今後これらの結果がさらに明らかになることでサガラメエキスおよびマンダリンオレンジ果皮エキスの機能についてより多くの知見が得られることを期待しています。

参考文献

1) Lack G. Epidemiologic risks for food allergy., J Allergy Clin Immunol, 2008, 121, 1331-6
2) 厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課:アレルギー疾患の現状等,2016.
3) 馬場 実.:アレルギーマーチ事始め.アレルギー・免疫 11(6):736-743,2004.
4) Palmer CN,Irvine AD,Terron-Kwiatkowski A,et al.:Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis.Nat Genet,38(4) :441-446,2006.
5) Nemoto-Hasebe I,Akiyama M,Nomura T,et al.:FLG mutation p.Lys4021X in the C-terminal imperfect filaggrin repeat in Japanese patients with atopic eczema.Br J Dermatol,161(6):1387-1390,2009.
6) 桝谷昇明, カザール ボロン ビスワス, 小島弘之, 伊藤賢一. マンダリンオレンジエキスの表皮構造強化機能及び角質透明感改善作用. 第40回日本香粧品学会講演要旨集. 90, 2015

論文学会発表

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